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2026年10月7日水曜日

血圧の「正常値」がまた下がった——それは医学か、それとも40年で400億ドル規模のマーケティングか

血圧の「正常」基準が、また静かに下げられた。


1970年頃、高血圧の目安は160/95(あるいは収縮期が「100+年齢」)だった。1980年代後半から140/90が基準となり、2017年頃には120/80が「高め」とされ、薬の検討対象になった。そして最近のアメリカ心臓協会(AHA)とアメリカ心臓病学会(ACC)の指針では、さらに10ポイントほど全体が押し下げられ、「正常」は110/70以下、「高め」は120/80で薬の適応、「ステージ1高血圧」は130/80でより積極的な治療、という流れになっている。


基準が下がるたびに、これまで「問題なし」とされていた数百万〜数千万人が「患者」に分類され、降圧薬の対象になる。これは単なる科学の進歩ではない。数字を少しずつ動かせば、市場が確実に拡大する仕組みだ。


根拠としてよく挙げられるSPRINT試験では、相対リスクが約25%減少したと報じられた。しかし絶対リスクの減少はわずか2%程度で、しかも高リスク集団を対象にした試験だ。平均的なリスクの人々では、絶対的な利益はほぼゼロに近づく。相対リスクだけを強調する数字の見せ方は、医学というよりマーケティングの常套手段に近い。


さらに問題なのは、低ければ低いほど良いという前提そのものだ。ある一次診療医は「ある程度まで下げると、かえって脳卒中や心筋梗塞のリスクが上がる」と指摘する。高齢者では、むしろやや高めの方が長生きする傾向を示す研究もある。薬で無理に下げた結果、めまいや失神で転倒し股関節を骨折しても、医師は「目標値を達成した」ことで評価され、報酬に影響する場合すらあるという。


降圧薬の副作用は軽くない。動悸、失神、腎機能障害、血管性浮腫、関節痛、慢性の咳、電解質異常、めまい、頭痛、脱水、筋痙攣、痛風、不眠、便秘、疲労、抑うつ、徐脈、喘息様症状、性機能障害……。特に高齢者では転倒リスクが現実的な脅威になる。


本当に必要なのは、個人の生理に合った「最適な血圧」を、食事と生活習慣で整えることだ。加工食品や種子油を避け、栄養密度の高いホールフードを中心に、カリウム(目安4700mg以上)とマグネシウム(600mg以上)を十分に摂る。これらが不足すると、心臓と血管は必要以上に負担を強いられる。


医師も患者も、測りやすい数字だけに囚われすぎていないか。健康的な食事、適度な運動、人生に意味を見出すこと——これらは血圧の数値よりはるかに重要でありながら、ガイドラインの点数化には乗りにくい。


基準値を下げるたびに「より多くの人が助けられる」という物語が語られる。しかしその裏側で、慢性的に薬を飲み続ける人が増え、製薬企業の売上が確実に積み上がっていく。健康な人を患者に変え、死んでしまった人からはもう利益が得られない。利益は、ちょうど「薬を必要とする状態」の中間にこそ生まれる。


私たちは、この構造をただ「最新の医学」として受け入れるべきだろうか。数字の歴史を振り返り、相対リスクの魔法を見抜き、薬以外の選択肢を本気で考える時期に来ているのではないか。

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