ある日、YouTubeで拝見した霊媒師さんのチャンネルで、恐ろしい教えを授かりました。「鏡や姿見は霊道、つまり霊の通り道になりやすい。使わない鏡は、布をかぶせておくことで霊障を防げる」とのこと。
「なるほど、それはいいことを聞いた!」と、私はさっそく、部屋の隅でひっそり佇む姿見に、古くなった毛布をかぶせて霊の侵入を防ぎました。これで我が家の平和は守られた…と、その時は満足していました。
しかし、数日後、恐るべき事態が発覚します。
なんと、あの毛布が消えているではありませんか!
全身の毛穴が開き、背筋に冷たいものが走りました。「毛布を消し去るほどの、強力な悪霊がこの家にいるに違いない…!」と、私は真っ先にそう確信しました。これは一体どんなお祓いが必要なんだろう…と頭を抱えながら、私は日々の雑務をこなしていました。
自宅介護をしている父のために朝食を作り、部屋に運んでいったその時、私は衝撃の光景を目にすることになります。
消えたはずの毛布が、父の体にかかっているではありませんか!
「…えっ?」
父は介護度5で、全介助が必要な体。一人で動くことすらままならないはずです。どうやって鏡から毛布を取ったというのか…?
その答えは一つしかありませんでした。
「悪霊が父の体に乗り移って、毛布を取らせたに違いない!」
私の頭の中には、鏡から毛布を取る父の姿に、うっすらと半透明の黒い影が重なっている想像図が浮かびました。
翌日、父の介助に来てくれたヘルパーさんに、私はこの恐ろしい霊障について語り始めました。すると、話を聞いたヘルパーさんは、困ったような、なんとも言えない表情で苦笑い…。
「やっぱり、霊とか信じない人なんだろうな」
私はそう思いましたが、もしかしたらヘルパーさんは、悪霊の存在に恐怖を感じて、何も言えなくなってしまったのかもしれません。
こうして、我が家の霊障騒動は、私の中でますます深まる謎となったのでした。