〜欧州離れとアジアシフトが進むエネルギー地政学〜
2022年のロシアによるウクライナ侵攻以降、世界のエネルギー地図は大きく変わりつつあります。
欧州連合(EU)がロシア産エネルギーを制裁対象としたことで、ロシアは輸出先をアジアへとシフト。
そして今、ロシア国営ガス企業ガスプロムは 「世界最大規模」となるガスパイプライン「シベリアのパワー2(Power of Siberia-2)」の建設に着手しようとしています。
■ 2022年:EUのロシア産エネルギー禁輸とノルドストリーム破壊
2022年、EUはロシアへの制裁の一環としてロシア産原油・天然ガスの輸入を禁止しました。
ただし、ハンガリーやスロバキアなど一部の国は例外扱いとなっています。
さらに、ドイツとロシアを結ぶ 「ノルドストリーム」パイプラインが爆破されるという衝撃的な事件も発生。
当時「ロシア経済を崩壊させる」とまで言われた欧州の戦略でしたが、実際にはロシア経済は持ちこたえました。
■ 2023年:ロシアはアジアにシフト、中国・インドと急接近
欧州市場を失ったロシアは、中国とインドという世界人口1位・2位の大国に目を向けます。
その結果、インドにおけるロシア産エネルギーの輸入比率は わずか0.2%から3年で40%へと急増。
中国への輸出も拡大し、ロシアは急速にアジア依存型のエネルギー戦略へと移行しました。
■ 2024年:「シベリアのパワー2」プロジェクト始動
この流れの中で、ロシアと中国の協力関係はさらに強化されます。
ガスプロムと中国石油天然気集団(CNPC)の間で正式契約が締結された 「シベリアのパワー2」プロジェクトは、年間 500億立方メートルの天然ガスを中国に供給する世界最大規模のパイプラインとなる予定です。
また既存パイプラインでも供給量増加が合意されました。
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シベリアのパワー1:年間380億㎥ → 440億㎥
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極東パイプライン:年間100億㎥ → 120億㎥
これにより、ロシアの対中依存は一段と進むことになります。
■ ドイツ・欧州の「自滅」構造
一方、欧州側は苦境に立たされています。
かつてドイツ経済の競争力を支えていたのは、安価なロシア産エネルギーでした。
しかし、ノルドストリーム爆破事件以降、ドイツはロシアとの関係を断ち切り、結果としてエネルギーコストが急上昇。
欧州は「ロシア依存を断ち切った」と強調しますが、実際には 仲介国を経由してロシア産エネルギーを3倍の価格で購入しているのが実情です。
その間にロシアはアジア市場で利益を確保し、今ではロシアがヨーロッパ最大の経済大国となっています。
■ まとめ:アジアへのパワーシフトは不可逆的
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EUはロシア産エネルギーを制裁対象としたが、結果的にロシアはアジアとの結びつきを強化
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中国・インドはロシア産資源を大量に輸入し、ロシア経済を下支え
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「シベリアのパワー2」は欧州離れを象徴する巨大インフラ
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欧州は「脱ロシア」を掲げつつ、実質的には高値でロシア資源を購入する逆転現象
この一連の流れは、エネルギーをめぐる 地政学的パワーシフトを示しており、今後数十年にわたり世界経済に影響を与える可能性があります。
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