グリーンランドは、デンマーク王国に属する自治領であり、世界最大の島として知られています。この島に対するアメリカ合衆国の関心は、19世紀後半に遡り、今日に至るまで断続的に続いています。近年、再び注目を集めている「購入」あるいは「取得」の議論は、決して突発的なものではなく、戦略的・軍事的な観点から長年検討されてきたテーマです。
以下に、主な歴史的経緯を時系列で整理します。
- 1867年頃(アンドリュー・ジョンソン政権下)
国務長官ウィリアム・H・スワードが、アラスカ購入(1867年)の成功を受けて、グリーンランドおよびアイスランドの取得可能性を検討しました。北極圏への進出と資源(鉱物、漁業など)の観点から議論されましたが、議会の反対などにより実現しませんでした。
- 第二次世界大戦期(1940-1941年、フランクリン・D・ルーズベルト政権下)
デンマーク本土がナチス・ドイツに占領されたため、アメリカはグリーンランドの防衛責任を引き継ぎました。1941年に「グリーンランド防衛協定」が締結され、米軍の基地設置が認められました。この時期の関心は、枢軸国に対する防衛と、北大西洋の戦略的支配にありました。
- 1946年(ハリー・S・トルーマン政権下)
戦後、冷戦の始まりとともに、アメリカはデンマークに対し、グリーンランドの購入を正式に提案しました。提案額は金1億ドル相当とされ、軍事基地の確保やソ連脅威への対抗が主な理由でした。デンマーク側は主権を理由に拒否しましたが、米軍の駐留は継続されました。
- 冷戦期以降(1951年協定など)
1951年に新たな防衛協定が結ばれ、Pituffik(旧Thule空軍基地、現Pituffik宇宙基地)の運用が認められました。以降、アイゼンハワー、ケネディ政権下でも基地拡大や監視網強化が進められ、北極圏のミサイル防衛・宇宙監視の要衝として位置づけられました。
- 2019年および2025年以降(ドナルド・トランプ政権下)
トランプ大統領は、グリーンランドの戦略的重要性(北極航路、レアアース資源、中国・ロシアの影響力排除)を強調し、取得の意向を公に表明しました。デンマークおよびグリーンランド自治政府は一貫して拒否の姿勢を示し、「売り物ではない」との立場を明確にしています。現在の議論では、国家安全保障と北極圏の覇権維持が主な背景となっています。
これらの試みは、いずれも成功していません。グリーンランドはデンマークの自治領として、2009年の自治法により住民の自己決定権が強化されており、独立志向も存在します。アメリカの関心の根底には、北極圏の地政学的価値―新航路の開拓、資源開発、ミサイル防衛線としての位置―が一貫してあります。
グリーンランドの現状では、デンマークが外交・防衛を担当し、アメリカは既存の基地を通じて協力関係を維持しています。将来的な変化は、国際法、主権尊重、住民の意思に基づくものでなければなりません。この歴史を振り返ることで、北極圏をめぐる現代の地政学が、より深く理解できるでしょう。
(参考:歴史的文書および公的記録に基づく年表)

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